ひっくり返そうひっくり返そう、何度だって。 SPECIAL 02

過去、現在、未来と つながる思いとは?

社長が語る、失敗からの学びと見えた道のり

株式会社ホットランドホールディングス
代表取締役
佐瀬 守男

当社の原点は、創業者が抱いた「日本発の和のファストフードをつくりたい」という純粋なあこがれでした。数々の失敗を糧に、いかに事業を成長させ、上場を果たし、そして世界展開へと突き進んできたのか。代表取締役の佐瀬が、自身の歩みと、次世代に託す「飲食ビジネスの可能性」を語ります。

大きく成功するために、
誰よりも多くの失敗を

「たこ焼」での創業に至るまでの経緯を教えてください。

高校時代、地元・群馬県桐生市にアメリカ発のファストフードチェーンが次々出店し、放課後、仲間と立ち寄る時間が本当に楽しみでした。そして店舗の雰囲気そのものにあこがれを抱いたことが、飲食業を志す原点となりました。いつか日本人の自分らしく、世界に通用する「和のファストフード」をつくりたい。それが当時の私の夢となったのです。

その後、約40万円の資本金を元手に、焼きそばとおむすびの専門店「ホットランド焼きそば」を開店しました。しかし、経営は思うようにいきません。焦りから、お客さまの要望に応える形で、お好み焼、たい焼、ラーメンと商品ラインナップを増やしていきましたが、それが売上につながることはなく……。むしろ、つくり置きが増え、一つひとつの商品の質を低下させるという悪循環を招いてしまいました。

「これは自分の理想ではない。やはり熱々のおいしさを届けたい」。その原点に立ち返った時、一つの商品に絞り、その専門性を極めようと決意しました。そこで選んだのが、お子さまからお年寄りまで幅広い層に支持され、時間帯を問わず需要が見込める「たこ焼」でした。

その後、どのような思いで一号店を出店されたのですか?

全国のたこ焼を食べ歩いて研究を重ね、現在の銀だこのレシピが完成した瞬間、「このたこ焼に賭けよう」と思いました。たこ焼を何度もひっくり返す躍動的な動作、焼き上がる音、香ばしい匂い……。これこそが、私が求めていた「和のファストフード」だと確信し、群馬県みどり市にあるスーパー内に「築地銀だこ」一号店をオープンしたのが、当社のすべてのはじまりです。

これまででもっとも印象に残っている失敗は何ですか?

店舗数が100店舗に達した頃、壁に直面しました。出店しても閉店が相次ぎ、店舗レベルも低下したのです。最大の要因は、急激な店舗拡大に「人材育成」が追いついていなかったことでした。「店舗を任せられる仲間を育てていかなければならない」。そう痛感した私は、毎日のように社員と対話を重ね、「どうすれば同じ志を共有できるか」を必死に問い続けました。その結果、思いをともにする仲間が増え、その絆が新たな仲間を呼び寄せる好循環が生まれ、これが組織としての力になりました。

他にも、たこ焼の材料不足問題など、数えきれないほどの困難や失敗がありました。しかし、仲間と知恵を絞ってそれらを乗り越えた経験が、その後の300店舗達成へとつながったのです。

多岐にわたるブランド展開を
進める理由

たこ焼への集中から、現在の姿に至るまでどんな思いの変化があったのでしょう?

創業時から「300店舗まではたこ焼に集中しよう」と決めており、約4年でその目標を達成した後に業態拡大に踏み出しました。まず考えたのは、「たこ焼という強みを使って、もっと新しい価値を生み出せないか」ということ。その挑戦から、「銀だこハイボール酒場」が生まれました。たこ焼をつまみにお酒を楽しむスタイルは爆発的な支持を獲得。そこで見出したのが、「圧倒的においしい単品+アルコール」という業態の豊かな可能性です。「おでん+アルコール」の「おでん屋たけし」はその成功体験から生まれました。現在は約40のブランドを展開していますが、「単品でおいしく、主役になれる個性的な食材を、いかに派生させるか」という考え方は、すべてのブランドに共通する当社のDNAです。

そのDNAのもと、M&Aにより「もつやき処 い志井」グループの子会社化を実現。日本一と言えるもつやきの味、そして社員の方々が自社ブランドに抱く強い誇りに魅了され、仲間になっていただいたのです。M&Aの大きなメリットは、異なる領域のプロフェッショナルが加わることで、社内に多様な知見が蓄積され、既存業態もさらに強化されることです。この成功を糧に、現在も新領域・新業態の獲得を目指して、積極的にパートナーシップを広げています。

上場したことは、事業の成長にどんな効果をもたらしたのでしょうか?

「より多くの人たちに喜んでもらうための地力をつけたい」という思いから上場を目指し、2014年9月に東証マザーズへ、翌年には東証一部への上場を果たしました。資金力や信用力の向上はもちろんですが、最大の収穫はガバナンスが強化され、社員の働く環境を徹底して整備できたことです。また、国内外での信頼が高まったことで次なる出店や提携がスムーズになり、成長スピードを飛躍的に加速させることができました。

飲食ビジネスが持つ可能性と
未来への期待

積極的に海外展開もされていますが、今後はどんな未来図を描いていますか?

最初に「ホットランド焼きそば」を始めた時から「将来は世界で勝負したい」という思いがありました。その思いを形にするため、香港を皮切りに、現在はアジア・アセアン各国でのフランチャイズ展開、さらに米国事業の拡大を進めています。当然、言葉や商習慣の壁はありますが、困難を乗り越えてきた当社の仲間には、「失敗しても、そこから学び、また挑む」というマインドが根づいています。この姿勢こそが、海外展開を支える最大のエンジンです。

また、日本の人口が減少する一方、インバウンド需要の拡大を含め、飲食産業は想像をはるかに超える巨大なマーケットへと成長する可能性を秘めています。そうしたなか、さまざまなアイデアを形にし、多くの新しい業態をつくり、世界中に笑顔を届ける。それが私たちの描く未来です。

海外展開をはじめ、高い壁に挑み続けられる原動力は何なのでしょうか?

たとえば、東日本大震災が起き、全店が営業停止状態になった時のこと。その際、私たちは被災地の石巻に会社を移転し、全社員でゼロから商店街と店舗を立ち上げ、復興とともに運営に当たりました。また、「築地銀だこ」が300店舗を超えてから苦労したのは、原料のたこの調達です。そのため、産地であるモーリタニアに自社の製造拠点をつくりました。数々の壁に直面しながらも、とにかく行動し、失敗しながら学ぶことで成功をつかみ、さらに「もっと地力をつけよう」と上場を果たし、現在の当社があります。この歩みのなかで連綿と培ってきた熱い思いこそが、私たちがさらに高い壁に挑み続ける原動力になっています。

今後も新たな壁にぶつかり、失敗もするでしょう。しかし、失敗からの学びこそが、私たちが目指す未来へつながる道なのだと確信しています。

人の数だけ可能性のある飲食ビジネスを追求するには、どんな資質が求められるのでしょうか?

自分が提供した商品やサービスで、お客さまが笑顔になる。それを自分の喜びとして素直に感じ取れる「感性」が第一だと思います。また、飲食ビジネスはチームプレイです。そのためチームメイトが「あなたと一緒に働けてよかった」と思える環境を、自らつくり出そうとする姿勢が欠かせません。

これらが根底にあれば、当社で働いていくなかで誰もが着実に成長できます。「どんどん失敗してください。あきらめなければ、それは必ず自分だけでなく会社の成長の糧にもなります」。これが、私が仲間に伝え続けている言葉です。手前味噌ですが、当社は日本一働きがいのある会社だと自負しています。もし私がいま学生だったら、迷わずこの門を叩くでしょう(笑)。飲食のさまざまな業態を広めていくことに夢を抱くみなさんと、一緒に働ける日を楽しみにしています。

みんなで、みんなの失敗を讃えよう。 それはきっと、未来への大きな財産になるのだから。